最後の公開

・・・また、このフワフワした感じです。飛んでいるわけではなく、空の中にいるような。冷たくない水の中を泳いでいるような。

もしも次の次とか、それのまた次、なんていうものがあるならば・・・。

 

 

 

俺はいつから、籠の中にいたんだろう。

老いた爺さんが佇む狭い部屋の中にもっと狭い籠の中で、俺は考えていた。

 

カランコロンと妙な音が響き、物珍しそうに俺を見ては笑って去っていく複雑な匂いをメシで取り払う毎日を過ごしていた。

「ボサボサのポメラニアン」なんて聞きあきた。

 

今日は何度目のカランコロンだろう。

横目で見てみると、いつか嗅いだような程よく土の匂いのするガキが俺を見つめていた。

他の連中と違ったのは、笑わなかったこと。ただそれだけだが、土の匂いのするこのガキが少し気になった。

 

と、同時に俺はガキに連れて行かれた。外の匂いと音とヤケドしそうな光に

心から感動した。

それから間もなくして木と土の匂いのする家に来たようだ。

よく見てみるとガキは2人いて、小さいヤツ、大きいヤツがいた。

俺は大きいヤツに連れてこられた。

 

大きいヤツはしきりに「ユウ」と叫ぶ。ユウってなんだ?

でも大切な言葉なんだろう。覚えていよう。ユウ。

 

それから俺は大きいヤツと遊んだ。階段を昇ったり降りたりしただけだが、

走ることがこんなに楽しいことだとは思わなかった。

食って寝る。それが楽しいことだと思っていたのに、このガキには驚かされた。

 

クッキーというものを初めて食べた。

美味しくて興奮した。二枚目のクッキーを食べようとしたらガキが

「ダメだ」というから思い切り噛んだ。

柔らかくて硬いような感触だった。ドロドロと血が出ていた。

 

地面に溜まるほどの血。

 

アウトローな俺の最強の攻撃だ。ガキは泣いとけよ、と思ってた。

 だが違った。

 

このガキは、血まみれの手で俺の口をわしづかみにして「イケナイ」と言った。

この家に来てから、驚きの連続だ。俺が怒られるとは。

 

それから俺はコイツを相棒と呼ぶことにした。

 

この家にいる群れは、よく出かける。もちろん俺も一緒だ。

海、山、雪、色んな場所を見てきた。

そのたび、相棒は悲しそうにしていた。理由は分らなかった。

元気出せよ。それしか伝えられなかった。悲しい理由を教えてくれなかったから。

相棒は「ユウ」と、呟いていた。

 

 

これで出かけるのは何度目だろう。

家は鉄の匂いになったり階段が増えたり、部屋の形が違ったりした。

ピンク色の花が咲くころに、よくあることだった。

 

相棒の匂いも変わってきた。

毎日、青い服に首輪をして大荷物で外に出たかと思ったら夜まで帰ってこなかったこともある。

そんな日は決まって、土の匂いがした。ああ、これが相棒の匂いだ。

懐かしい、暑い日。

 

 

相棒はたまに泣きながら俺と散歩に出かける。

そんな時はいつもとコースが違って、もう帰れないんじゃないかってくらいに遠いところまで来てしまう。

元気出せよ。またそれしか伝えられなかった。泣いてる理由を教えてくれないから。

でも、元気を出してほしいことを伝えると、ちゃんと家に戻ることを思い出してくれるから伝えておいて良かった。

こんな遠くまで来て俺のメシはどうする気だったんだ。

でも良い日もあった。ケーキというものをたんまり食べさせてもらった日がある。

クッキーより100倍ウマイ。そんな日は家の群れの一族が全員笑顔で

「ユウ」と言っていた。

よく腹が鳴る、少し寒い日。

 

 

相棒がガッコウノヒトという名前の女の人を連れてきた。

そのガッコウノヒトは性格が悪そうだったから靴下を噛んだらガッコウノヒトに蹴られた。やっぱり性格が悪いんだ。

相棒を守るため、監視していた。飲み物を飲んでるだけなのに何故か汗みたいな匂いがする。

さっき蹴られた仕返しに、ガッコウノヒトの帰り際にもう一度靴下を噛んだ。

何故か今度は相棒に怒られた。守ったのになんで?

寒いのに汗臭かった雪の日。

 

 

寒くて暑い毎日を過ごして。

相棒の服は青くもないし首輪もなくなった。代わりに小さい方のガキが似たような服を着るようになった。

相棒は、出会ったころから小さいガキを大切にしていた。だから小さい方は噛まないでいた。相棒とは喧嘩したら噛むけどね。

 

毎日、喧嘩して仲直りするのが楽しかった。

 

でも相棒は、突然居なくなってしまった。

 

青い服じゃなくなったから?

首輪しなくても良くなったから?

分からなかった。

籠の中にいたときよりずっと真剣に考えた。

でも教えてくれなかったから分からなかった。

元気出せよ。って誰が言ってやれるんだ、そんなことばかり考えるようになった。

 

 

暖かい日、暑い日、少し寒い日、氷みたいな日を迎えて。

たまに、相棒に会える。

その時は花束を持ってたりケーキを持って来てすぐ居なくなってしまう。

氷みたいな日は、少し長く喧嘩できた。その時に食べたモチとかいうメシがうまかった。

 

相棒が居なくなると遠吠えをして呼んでみる。

戻ってこないことは分かっているけど。

次はどれくらいで氷みたいな日が来るのか教えてくれないから、

呼ぶしかできなかった。

 

 

氷みたいな日を何回か迎えて。

相棒は「ガキ」と呼んでいた時よりでっかくなって、車にも乗るようになっていた。

黒っぽい服を着て、何だか偉そうだった。

ずっと元気だったんだな。

そう思えて、俺は安心したのかよく寝るようになった。

 

散歩の時間は、小さい方のガキ・・・といっても、このガキもでっかくなったからガキとは言えないが・・・まあ、ガキが連れて行ってくれようとしても一度寝るとなかなか起きれなくてまた眠った。

「も~!ユウ~」って遠くから聞こえた気がした。

 

眠ってる間に、ユウについて考えてみた。

 

大切な言葉。この家の群れは全員知ってる言葉。

相棒がその言葉を言うときは心なしか優しいような気がする言葉。

その言葉を聞くと、何故か嬉しくなる魔法みたいな言葉。

俺にしか言わない言葉。

俺だけの言葉。

 

・・・。

俺だって、アイツのこと相棒って “呼ぶことに決めた” っていうのに、ああなんで気が付かなかったんだろう。

相棒だって、俺を「ユウ」って “呼ぶことに決めた” んだってことを。

 

遠くからまた「ユウ」って聞こえる。

近くにいるのに、遠くから聞こえて、心地よくて嬉しくてまた眠くなる。

 

何度も遠くで「ユウ」って聞こえる。何も教えてくれなかった相棒に

「元気出せよ」

って、俺の代わりに誰か伝えてくれ。

今日が氷みたいな日とは遠い日だってことは何となく分かるから。

 

また、このフワフワした感じだ。空を飛んでるわけでもないのに空の中にいるような・・・ぬるい水の中にいるような・・・

 

 

真っ白な空間で相棒が泣いているのが見えた。

夢かもしれないし本当に泣いてるのかもしれない。

だから俺は笑って、元気出せよ。そう言った。届いたかは、分からない。だって教えてくれないもんな。

届いたことにして、俺はフワフワした感じに身を任せることにした。

 

 

 

 

ぼくはフワフワして、お空を飛んでるみたいにしていたら、しろい布でグルグルまきになってる人をみた。

ぼくは、その人のところにいかなきゃいけないと思った。

その人が呼んでると思った。

 

すごくモコモコしてて、ちょっとボサボサで、それとオレンジ色で、いっぱいやさしくなったら行くから元気で待っててね。

 

 

 

 

【ぽん吉と石川の生活】

ご愛読ありがとうございました!

 

いきなりすぎて申し訳ございません。

この物語ありきのブログなため、いつも日常風景ばっかり記事にしていたのでビックリかと思います。驚きのあまりひっくり返ってません?大丈夫そうですね、ありがとうございます。

 

実はブログ開設当初、犬の成犬年齢である2歳かつ、ウチの子記念月である11月に当ブログは締めようと思っていました。

この物語は『ぽん吉と石川の生活』が始まる前に起こっていた実話です。

アレ?って思う部分もあるかもしれませんが、みなさまそれぞれの見解が正解です(^^)

 

これからも、クリスマスやお正月・・・変わらぬ日々を過ごしていきますのでリアルのぽん吉と石川の生活は終わりではありません。

 

いつかまた、どこかで石川を見かけたらお声がけくださいね(^^♪

 

 

それでは皆さん、お元気で!!

f:id:pon_ishikawa:20171129153754j:plain

隠しメッセージ→ ぽん吉とのリアルな日常…@Ponk_Ishikawaで少しずつ発信する予定です